コラム

グラフィックボード(GPU)の選び方は?ギガバイトのプロダクトマネージャーに聞いてみた【初心者向け】

数あるPCパーツのなかでも、特に高価なもののひとつであるグラフィックボード(GPU)。PCを作る、あるいは購入するうえでの予算は限られていますから、果たしてどれを選べば良いのかは悩みが深いことでしょう。特に初心者の方にとっては、より難しい選択になります。

この記事では、主に初心者向けに、グラフィックボード選びについての最適解をご紹介。ギガバイトでグラフィックボードのプロダクトマネージャーを務める川村直裕さんの解説とともにお届けします。

【執筆者紹介】
畑野壮太
PC・ガジェットなどのジャンルを得意とするライター。GetNavi、ASCIIなどのメディアを中心に、執筆活動を行っている。自作PCを愛用しており、パーツはコスパ重視で選ぶ主義。数千時間プレイしたタイトルがあるほどのゲーマーでもある。

 

そもそもグラフィックボード(GPU)とは

グラフィックボードはその名の通り、PCのグラフィック性能を左右するパーツです。グラフィック機能自体はCPUにも内蔵されていますが(一部を除く)、ゲームや映像編集など特に負荷の大きい用途の場合は、グラフィックボードがないと動作が安定しなくなります。

グラフィックボードの内部には、GPUというチップが内蔵されています。GPUはGraphics Processing Unitの略で、グラフィックボードの心臓部分。グラフィックボードとGPUは混同されがちな単語ですが、前者はパーツそのものを指す単語であり、後者はチップを意味します。この記事でも、双方を区別して表記していきます。

さて、現在GPUを製造しているメーカーは主に2社。NVIDIAとAMDです。前者はGeForce、後者はRadeonというシリーズ名で発売しています。具体的な型番の例を挙げると、GeForce RTX 4090、Radeon 7900 XTといったようなもの。型番に入っている4桁の数字は、千の桁が世代(数字が大きいほど最新世代)、百以下が同一世代内での性能差を表しています(数字が大きいほど高性能)。また、数字の後ろにアルファベットが入っている場合(GeForceならTiやSUPER、RadeonならXT、XTX)は、無印のものより高性能です。

↑GeForceのロゴ

なお、GPUにはRAM(PCでいうメモリにあたるもの。VRAMと表記されることもある)が搭載されており、型番の後ろにその容量が表記されることがあります。同じ型番のGPUでも、RAMの搭載量が異なる場合があるので留意してください(例:GeForce RTX 3080 10GB/12GB)。この記事では、RAM容量が複数ある型番についてのみ、RAM容量を付記しています。

↑GeForce RTX 3080を搭載したグラフィックボード「AORUS GeForce RTX™ 3080 XTREME WATERFORCE 10G (rev. 2.0) 」

そして、これらのGPUを使って、ギガバイトをはじめとしたPCパーツメーカーがグラフィックボードを製造しています。同じGPUを搭載しているグラフィックボードでも、サイズ感や装備している映像出力端子、冷却機構などが異なっているので、購入前にはその製品の特性をしっかりチェックしましょう。

グラフィックボード(GPU)の選び方を、ギガバイトのマネージャーに聞いてみた

では、グラフィックボード(GPU)はどのように選べばよいのでしょうか。ギガバイトでグラフィックボードのプロダクトマネージャーをしている川村直裕さんに聞いてみました。

選び方その1:スペック

PCを作る、あるいは買うということは、何かしらの用途があるからでしょう。いくらPCを手に入れたからといって、本来想定していた用途で満足に使えないようでは意味がありません。なので、第一に考えるべきは用途に基づいたスペックです。今回は、特にゲームを念頭に置いて考えていきます。

各ゲームの公式サイトを見ると”推奨スペック”、”最低スペック”という形で、そのタイトルの動作に必要なPCの性能が示されています。ゲーミングPCの場合、この推奨スペックを満たすようにパーツを構成すれば基本的には問題ありません。ただし、推奨スペックの1回り〜2回り上のスペックでPCを構成するのが川村さんのおすすめです。

「推奨スペックは60fps程度のフレームレートで映像を出力することを念頭に設定されており、あくまで”ある程度快適にゲームがプレイできる”という指標に過ぎません。フレームレートというのは、1秒間に画面を切り替えられる回数のことで、60fpsなら1秒間に60回の画面切り替えができるという意味です。フレームレートが高いほど、グラフィックがヌルヌルと動きます。

60fpsでも十分ゲームをプレイすることはできますが、さらなる快適性や勝つことを考えるのなら100fpsは欲しいところ。60fpsと100fpsでは体感レベルで明らかな差があるので、予算的に可能であれば、100fps以上の環境を整えたいところです」(川村さん)

なお、グラフィックボードがいくら高いフレームレートの映像を出力できても、接続しているモニターがその映像を映し出せなければ意味がありません。性能の高いグラフィックボードを導入する際には、それと同時にゲーミングモニターも導入しましょう。ゲーミングモニターの性能の指標としてリフレッシュレートというものがありますが、これは1秒に画面を切り替えられる回数のこと(単位はHz)。つまり、グラフィックボードのフレームレートに対応する数値です。リフレッシュレート120Hzのモニターがあれば、最大120fpsの映像を出力できるということになります。双方の数値をあわせて選びましょう。

↑最大170Hzのリフレッシュレートを誇るゲーミングモニターM27Q P

選び方その2:予算

PCパーツを選ぶうえで、予算の問題は避けて通れません。グラフィックボードはPCパーツのなかでも特に高価で、予算に最も響いてきます。コスパの良いものを選びたいところです。

「当然、性能を求めれば求めるほど価格は高くなってしまいます。そこでひとつの指標にしてほしいのが、プレイするゲームの映像をフルHD画質・120fpsで出力できること。タイトルにも左右されますが、この基準で選べば、総予算を15万円以内に抑えてPCを作ることも可能です。動画編集の場合、高性能なグラフィックボードであるほど書き出しの速度は上がりますが、4K映像を出力しないのであれば、5万円以下のグラフィックボードで事足ります」(川村さん)

グラフィックボード(GPU)のおすすめは?

選び方の指針を聞いても、具体的にどのグラフィックボード(GPU)を選べばよいのか、初心者には難しいでしょう。川村さんは、「GeForce RTX 3060を搭載したものを購入しておけば、基本的に問題ない」といいます。

「いま人気のPCゲームが、どれくらいのスペックを要求しているのか調べてみました。今回は5タイトル(下記)について調査しましたが、GeForce RTX 3060を使ってフルHDで100fpsを出せないゲームはありませんし、たいていのタイトルでは120fps以上出力できます。当然、推奨スペックも満たしています」(川村さん)

なお、川村さんが調べてくれた、タイトルごとの要求スペックは下記の通りです。なお、GPUのシリーズは全てGeForceで、型番の「GeForce」は一律で省略しています。

ゲームタイトル最低スペック推奨スペックフルHD120fps出力に必要なGPU備考
原神GT 1030GTX 1060 6GB60fps制限があるため、60fpsを超える映像は出力不可
マインクラフト with RTXRTX 2060なしRTX 3060 TiRTX 3060でも、100fps程度の出力は可能
Apex LegendsGT 640GTX 970RTX 3060
モンスターハンターライズGT 1030GTX 1060 3GBGTX 1650 SUPER
オーバーウォッチ2GTX 600GTX 1650RTX 3050

「上の表を見れば、GeForce RTX 3060が、ゲーミングPCにとって無難な選択であることがご理解いただけると思います。動画編集の場合でも、4K映像を出力しないのであれば、これで十分でしょう。ちなみに私がGeForceをおすすめするのは、製品の成熟度が高く、最適化されているソフトが多いからです」(川村さん)

GeForce RTX 3060搭載グラフィックボードのおすすめは?

GeForce RTX 3060がおすすめのGPUだとわかったところで、グラフィックボードはどれを選べばよいのでしょうか。川村さんのおすすめは「GeForce RTX 3060 EAGLE OC 12G (rev. 2.0)」です。

↑GeForce RTX 3060 EAGLE OC 12G (rev. 2.0)

「この製品をおすすめする理由は、まず安いことですね。本機の価格は5万円程度で、GeForce RTX3060を搭載しているグラフィックボードのなかでは比較的安価です。そして、実際に売れているモデルでもあります。PCパーツショップでもおすすめされていることが多いですね」(川村さん)

GeForce RTX 3060 EAGLE OC 12G (rev. 2.0)の特徴としては、作りがシンプルなことが挙げられます。高性能なグラフィックボードは、多くのLEDが内蔵されていることが多いですが、本機のそれは控えめで、上部がピンポイントで光る程度。また映像出力端子にも個性があり、HDMIを2つ搭載しています。GeForce RTX 3060を搭載したグラフィックボードの多くがDisplayPort×3、HDMI×1の構成であるなか、本機はDisplayPort×2、HDMI×2。DisplayPortへのシフトが進んでいる現在ですが、使っているモニターによっては、HDMIがあると嬉しいというケースも多いでしょうから、この構成は貴重です。

↑本機の映像出力端子。DisplayPortとHDMIを2つずつ備えているのがわかります

その他のパーツにもよりますが、本機を使えば総額15万円程度でゲーミングPCを構成することも視野に入ります。川村さんがおすすめする通り、予算を抑えつつ、必要な性能を確保できる、優秀な選択肢といえるでしょう。

「なんとなく」でグラフィックボードを選ぶのはやめよう

グラフィックボード以外のパーツにもいえることですが、初心者はPCパーツを「なんとなく」で選んでしまいがちです。型番が大きければきっと高性能だから大丈夫だろうと思うかもしれませんが、ただ性能が高ければ良いわけでもありません。上でも書きましたが、高性能なグラフィックボードはゲーミングモニターとあわせて導入しなければ真の実力を発揮できませんし、バランスを考えて構成を組む必要があります。この記事が、あなたのグラフィックボード選びの参考になれば幸いです。

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