コラム

【初心者向け】CPUの性能の見方&選び方ー基礎編

CPUは、central processing unitの略で、中央処理装置または中央集積処理装置と呼ばれます。PCが行う処理の中核を担う部品であり、その性能の高低を大きく決定づける要素のひとつです。それゆえ、CPUを選ぶ際には、ある程度慎重になる必要があります。この記事では、初心者の方がCPUを選ぶ際に、何を見て選べばいいのか、性能の見方や選び方の基準を解説していきます。

【執筆者紹介】
畑野壮太
PC・ガジェットなどのジャンルを得意とするライター・家電製品総合アドバイザー。GetNavi、ASCIIなどのメディアを中心に、執筆活動を行っている。自作PCを愛用しており、パーツはコスパ重視で選ぶ主義。数千時間プレイしたタイトルがあるほどのゲーマーでもある。

CPUの2大メーカー・IntelとAMD

CPUを選ぶうえで、まず知っておかなければならないのが、IntelとAMDという2大メーカーの存在です。Intel製のCPUは「Core」シリーズ、AMD製のCPUは「Ryzen」シリーズと、それぞれ名称があります。PCに搭載するCPUを選ぶ際、この2つのメーカーのどちらを採用するかが、最初の選択となります。

この2大メーカー、どちらのほうが優れている…というわけではありません。しかし、どちらを選ぶかによって、ほかのパーツの選択肢が限定されます。CPUをマザーボードに載せるときには、CPUソケットという箇所に装着することになるのですが、Intel製CPUとAMD製CPUでは、対応しているCPUソケットの形状が異なるのです。

↑マザーボードのCPUソケット

逆にいえば、マザーボードにはIntel製CPU向けとAMD製CPU向けのものがあり、CPUのメーカー選択によって、そのどちらを採用するかが決まるということ。もし、使うマザーボードが初めから決まっているという場合は、必然的にそれに対応したメーカーのCPUを選ぶことになります。一方で、使いたいマザーボードが限定されていないというのなら、IntelとAMD、どちらのCPUを選んでも良いということになります。

↑AMD製CPU Ryzen 9000/8000/7000シリーズに対応したマザーボード、X870E AORUS MASTER

なお、同じメーカーのCPUであっても、世代(後述)によって、対応するCPUソケットの形状が異なる場合があります。CPUとマザーボードを選ぶ際は、CPUソケットの形状が一致しているか、必ずチェックするようにしましょう。

CPUの世代・グレードで選ぶ

IntelとAMDのCPUには、ともに世代、グレードという概念があります。2024年9月現在の最新世代は、Intelが14世代で、AMDは第5世代にあたります。当然、世代が新しくなればなるほど性能は進化しているので、新しいものほど高い処理能力を発揮する、というわけです。また、世代の進歩によって、消費電力が少なくなる傾向もあるので、PCによる光熱費を抑えたいのなら、新しい世代のものを買っておいた方が吉といえます。

もうひとつ、大切な概念がCPUのグレードです。IntelとAMD、それぞれのCPUのグレードを、以下の表にまとめました。

IntelAMD
エントリーモデルCore i3Ryzen 3
ミドルモデルCore i5Ryzen 5
ハイエンドモデルCore i7Ryzen 7
超ハイエンドモデルCore i9Ryzen 9

同じCore i9であっても、第13世代のものより、第14世代の方が基本的に性能は高くなります。一方で、前世代のCore i7よりも、新世代のCore i5のほうが性能が高いといった逆転現象も起こります。

また、同じ世代、同じシリーズのCPUのなかにも、複数のモデルが存在します。たとえば、最新世代のRyzen 9のなかにも、様々なモデルが存在し、スペックや価格に差があります。CPUの世代とグレードは、性能を大まかに測る目安にはなるものの、絶対視できるものではありません。

CPUの性能で選ぶ

ここからは、CPUの性能の見方に入っていきます。CPUの性能を見るには様々な数値をチェックする必要がありますが、それぞれがどのような意味を持っているのか解説します。

①クロック数

CPUの性能は、「命令を処理する速度」と「同時に処理できる命令の数」で決まります。このうち、「命令を処理する速度」を決めるのが、クロック数(周波数)です。

単位・Hz(ヘルツ)で表されるクロック数は、CPUが1秒間に処理できる命令の数を示しており、この数値が高いほど処理速度が速いことになります。しかしこれはあくまで処理速度が速いというだけであって、クロック数が高い=高性能とまでは断言できません。ちなみに現代のCPUの周波数を表す際、単位はGHz(ギガヘルツ)で、1GHzは、1Hzの10億倍にもなります。

なお、ハイエンドなCPUになると、ベース動作周波数とブースト時の最大周波数の2種類のクロック数が書かれていることがあります。これは、通常はベース動作周波数で作業を行い、高負荷がかかる作業の際は、一時的にブーストをかけて処理速度を上げるという意味です。

②コア数

コア数は、いわばCPU内の頭脳の数で、「命令を処理する速度」と「同時に処理できる命令の数」の双方に影響する数値です。コアが多ければ、複数のタスクを処理するときに個々のコアで役割を分担できますし、重いタスクを処理するときにはそれぞれのコアに負担を分散できます。クロック数が同じであれば、コア数の多いCPUのほうが高性能といえます。

昔は、コア数が1や2という時代もありましたが、いまでは10を超えるのも当たり前で、ハイエンドなものになると20以上にもなります。それだけ、PCの性能が進歩してきたということですね。

③スレッド数

スレッドとは、同時にこなせる作業の数を表した単位です。スレッド数が多いと、「同時に処理できる命令の数」が増えます。

同時に処理できる命令の数を決めるという点で、スレッド数はコア数と同じです。しかしスレッド数が多いと、負担の少ない処理をしている、つまりコアの処理能力に余裕があるとき、その余裕をより有効活用して処理数を増やせるようになります。

ここまで紹介した、クロック数、コア数、スレッド数の3要素の掛け算が、CPUの性能を大きく決定付けます。CPUを選ぶ際には、必ず見ておくべきポイントといえるでしょう。

④キャッシュ

キャッシュとは、正式にはキャッシュメモリといい、一時的にデータを記録しておく装置のことです。PCにはメモリを搭載することになりますが、それと同じ役割のものがCPU内部にもあるということになります。

マザーボードに搭載するメモリと比べ、キャッシュメモリにはより高速なアクセスが可能です。アクセスが速い順に、L1キャッシュメモリ、L2キャッシュメモリとなっており、この容量が多ければCPUの処理速度が上がります。基本的には、CPUがハイエンドになるに従って、キャッシュの容量も増えていきます。

⑤消費電力

同じ性能のCPUなら、消費電力の少ない方が嬉しいところです。近年のCPUの進化は、性能あたりの消費電力が減少する傾向にあります。つまり、同程度の性能のCPUでも、最新世代のもののほうが消費電力が下がっているというわけです。なかには、性能は上がっているのに、消費電力が下がっているというケースもあります。

消費電力が少なくなれば発熱も抑えられるので、PCをより安定的に動作させられるようになります。価格との相談にはなりますが、この観点でも、最新世代のCPUを採用する意義は大きいといえます。

⑥内蔵GPU機能の有無

CPUには、GPUを内蔵しているものとそうでないものがあります。GPUを内蔵したCPUを搭載しているPCは、グラフィックボードが不要になります。一方で、そうでないCPUを採用する場合は、グラフィックボードが必須です。

こう書くと、GPU機能を内蔵している方がいいと思われるかもしれませんが、決してそういうわけでもありません。というのも、CPUの内蔵GPUは、グラフィックボードに搭載されたものと比べると性能が控えめになります。また、ゲームや動画編集に用いるPCであれば、グラフィックボードはどちらにせよ必要になります。そんなPCのCPUにGPUが内蔵されていても、無駄になってしまいます。

しかも、GPUを内蔵したCPUは、そうでないものと比べて価格が多少高めになります。内蔵GPUはあればいいというものでもないので、自身のニーズに合わせて選びましょう。

ハイエンドなCPUが必要になるケースとは?

性能の見方を知ったところで、ハイエンドなCPUが必要になるケースを考えてみましょう。今回は、ビジネス用、ゲーム用、動画編集用の3点に分けて、ハイエンドCPUの必要性を考えてみます。

①ビジネス用PCには、ある程度のハイエンドCPUが欲しい

これは筆者の個人的な意見になりますが、ビジネス用のPCには、ある程度のハイエンドCPUが搭載されていたほうが良いと考えています。なぜなら、動作の快適性が仕事の効率に直結するからです。

そしてビジネス用のPC、特にノートPCの場合、グラフィックボードを搭載せず、CPUの内蔵GPUに頼るケースが多くなります。CPUにグラフィック処理も委ねることになるため、その負荷が上がり、ほかの処理速度にも影響が出てきます。こんなとき、スペックが控えめなCPUを使っていると、作業の快適性が損なわれかねないというわけです。個人的には、Intel製CPUであればCore i7、AMD製CPUならRyzen 7があるとベスト。最低でも、Core i5、Ryzen 5以上を選びたいところです。

②ゲーム用PCなら、推奨スペックの一回り上のものを選ぼう

ゲーム用PCなら、まずはプレイしたいタイトルの推奨スペックを確認してからCPUを選びましょう。おすすめは、推奨スペックの一回り上の性能のCPUを買っておくことです。

なぜなら、ゲームがPCに求める性能は、時代と共に上昇する傾向にあるからです。PCの性能を推奨スペックギリギリに抑えてしまうと、あとからやりたいゲームがでてきたときにスペックが足りない…なんてことも起こりえます。ゲームには高性能なグラフィックボードも求められるため、予算の問題はありますが、CPUの性能を妥協しすぎないようにしましょう。

③動画編集用PCは、4KならハイエンドCPUが必須

動画編集用PCの場合、使用するソフトにもよりますが、高いCPU性能が求められます。最低でも、ミドルレンジ以上のCPUが必須です。

ただ、ミドルレンジのCPUが対応できるのはフルHD画質まで。4Kの動画を扱いたいとなると、ハイエンドCPUが必要になります。4K動画で複雑な編集をしたい場合は、超ハイエンドCPUの必要性も出てきます。

CPUの細かい性能が気になったら、ベンチマークをチェックしよう

CPUの性能の見方や選び方を解説してきましたが、数字をいちいちチェックするのは面倒なこともあるでしょう。そういったときは、ベンチマークスコアを調べてみましょう。

調べ方は、性能を知りたいCPUの型番&ベンチマークで検索するだけです。ベンチマークであれば、CPUの性能差をひとつのスコアだけで知ることができます。前世代や同世代で性能の近いCPUとの比較もできるので、コスパの良いCPUを見つけたいときには参考になります。

PCを組む、あるいは選ぶときに、その性能を調べる作業はなかなかに楽しいもの。これまで適当にCPUを選んでいたという方は、次のPC選びでは、その数字に注目してみてはいかがでしょうか。自分が以前に使っていたPCからの進化の程度も分かりますし、新しいPCと出会ううえでのワクワク感が広がるはずです。

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