コラム

ギガバイトの有機ELディスプレイ・FO27Q3を1ヶ月間レビューしてみたら…

2024年6月公開のコラムで、有機ELディスプレイの魅力をお伝えしました。今回はそれに引き続き、ギガバイトの27インチ有機ELディスプレイの実機レビューをお届けします。これまで27インチ液晶ディスプレイを使っていた筆者が、初めての有機ELディスプレイを1ヶ月試用した、率直な感想を書いていきます。

【執筆者紹介】
畑野壮太
PC・ガジェットなどのジャンルを得意とするライター・家電製品総合アドバイザー。GetNavi、ASCIIなどのメディアを中心に、執筆活動を行っている。自作PCを愛用しており、パーツはコスパ重視で選ぶ主義。数千時間プレイしたタイトルがあるほどのゲーマーでもある。

今回試した製品・FO27Q3とは?

ギガバイトの有機ELゲーミングディスプレイ・FO27Q3。Samsung製の有機ELパネルを採用した本機は、鮮やかな色彩・漆黒の表現に優れ、QHD画質の映像を美しく映し出します。また、ゲーミングに特化しているというのもポイントです。ゲームで求められる応答速度とリフレッシュレートは、それぞれ0.03ms、360Hzという超高水準。タイマーやクロスヘア(照準点)の表示といった多彩なゲーミング補助機能も備えています。

単一のキーボードやマウスを、ディスプレイに接続した複数のPCで共用できるKVM機能も装備。高水準な基礎スペックはもちろん、多数の付加機能を備えたハイエンド機であり、単なるディスプレイにとどまらない活躍を見込める一台です。

↑FO27Q3

FO27Q3を導入した環境

レビューに入る前に、筆者のディスプレイ使用環境について書いておきます。

【筆者のディスプレイ使用環境】

  • 27インチIPS非光沢液晶ディスプレイ、24インチIPS非光沢液晶ディスプレイを設置
  • 27インチ液晶ディスプレイは、デスクトップPCとノートPC、PS5の共用
  • 24インチ液晶ディスプレイはモニターアームを装着のうえ、縦置きで使用

今回はメインである27インチディスプレイを、FO27Q3に置き換えました。画面のサイズは変わらず、液晶が有機ELに変わったことになります。

↑FO27Q3設置後のデスク

FO27Q3を導入して、何が変わった?

今回のレビューでは、筆者としては初めて、有機ELディスプレイをまとまった期間使用することになりました。そんな筆者が、FO27Q3の導入によって体感した変化は、主に下記の3点です。

  1. ディスプレイの設置スペースに余裕が生まれた
  2. 映像コンテンツを見るのが楽しみになった
  3. 眩しくないので、Wordやエクセルをダークモードにしなくても良くなった

ここからは、これらの要素について、感想を述べていきます。

1.ディスプレイの設置スペースに余裕が生まれた

有機ELディスプレイの魅力のひとつに、画面の薄さが挙げられます。有機ELは画面そのものが発光するため、液晶では欠かせないバックライトが不要です。それによって画面を薄くできるのですが、このおかげで設置性が大きく向上しています。

↑従来試用していた液晶ディスプレイとの画面の厚さ比較。左側が、FO27Q3

画面の薄い有機ELディスプレイなら、ディスプレイをデスクのより奥側に設置できるので、スペースを広く使えます。また、画面を目から離せるので、目の負担を軽くすることにも一役買ってくれます。カタログスペック上で比較すると、従来試用していた液晶ディスプレイと比較して、FO27Q3の奥行きサイズは2cm程度小さく、そのぶん余剰スペースができたことになります。たかが2cmと思われるかもしれませんが、これは脚部まで入った数字で、画面単体で比較するとその差はより大きくなります。筆者の使用しているデスクは奥行きが狭いため、その恩恵が感じられました。

2.映像コンテンツを見るのが楽しみになった

有機ELディスプレイならではの、色鮮やかな映像。特に黒の表現は秀逸で、液晶ではバックライトのせいで白っぽい黒になってしまうところも、まったく明かりのない漆黒を作り出せます。

今回レビューをする際に、筆者が遊んでいたゲームがPS5の「Rise of the Ronin」。幕末を舞台にしたオープンワールドアクションRPGで、薄暗いシーンが比較的多いタイトルです。液晶ディスプレイでプレイしたときと比較すると、暗い部分の明るさをしっかり落として表現してくれるため、明るい色が相対的に鮮やかに映っているように感じられました。細部の表現も精密で、猫などの動物の毛並みが、1本1本潰れずにしっかり映し出されているのも印象的でした。解像度は従来使っていた液晶ディスプレイと同じですが、表現の細かさには明らかに体感できる差がありました。

同じ映像を見るにしても、色が鮮やかになるだけで楽しみが広がります。筆者の場合は、映画などの映像作品を観るのが以前よりも楽しくなりました。作品の毛色にもよりますが、アニメよりも実写のほうが、有機ELディスプレイの実力がより発揮されやすいように思います。

↑カラフルな映像であれば、有機ELディスプレイの色彩の豊かさがより体感しやすくなります

3.眩しくないので、Wordやエクセルをダークモードにしなくても良くなった

あくまで筆者の感覚になりますが、有機ELディスプレイは、液晶に比べて、目が疲れにくいように感じます。液晶ディスプレイの場合、パネルの背後から投射されるバックライトから、強く、白い光が発せられます。その眩しさやブルーライトが、ユーザーの目にとって負担となるわけです。近年の液晶ディスプレイは目の負担を軽減する機能を搭載した製品が多いものの、バックライトは必ず搭載されているため、一定程度の刺激は避けられません。

筆者の場合、仕事柄、ディスプレイとはいつも睨めっこしているため、疲れ目用の目薬を手放せずにいました。目を少しでも楽にするため、画面の明るさを落とすのは当たり前。目への負担が大きい白い光を少しでも減らすため、Officeソフトの画面はダークモードにしていました。

↑Wordのダークモード。背景が黒色になります

ですが、FO27Q3を使っていて「ダークモードでなくとも大丈夫なのでは」と感じました。それくらい、目が楽なのです。有機ELディスプレイは黒い部分がはっきり黒くなるため、画面の明るさを落としても、白黒の区別がしっかりつきます。この点だけでも、仕事用のディスプレイとして、本機は優秀な一台だと実感できました。

目の負荷軽減の例として、液晶との差が特に顕著だった仕事上での話を書きましたが、ゲームや映像鑑賞のときも同様です。長時間画面の前にいても疲れにくいので、好きなエンターテイメントをじっくり楽しめます。

FO27Q3の品質は文句なし。あとはお財布との相談

筆者が使った限り、FO27Q3の品質には文句のつけどころがありませんでした。実際に使ってみて「これは欲しい!」と感じさせられました。そうなると、あとは価格面の話となります。

本機の価格は、16万2000円。27インチのディスプレイとしてはかなり高価です。その要因としては、液晶よりも高価な有機ELパネルを用いていることに加え、KVM機能などの多彩な付加機能を搭載していることが挙げられます。また脚部のつくりがしっかりしている点など、細かなところにも高級感が感じられます。ここまで備えている有機ELディスプレイとなるとかなり稀有で、明らかな唯一性があります。

↑FO27Q3の脚部は金属製で安定しています。それでありながら足は細く、スタイリッシュな外見です。

本機の購入を検討する場合、液晶ディスプレイと単純比較するのは避けたほうがよいかと筆者は考えます。というのも、コストの差が歴然だからです。価格を優先するのなら、素直に液晶ディスプレイを買っておいたほうが賢明だともいえます。それでも本機の存在意義があるのは、その唯一性ゆえです。

有機ELディスプレイでないと叶えられない美麗な映像を日常のものにしたい。どうせなら、ただのディスプレイではなく、ハイエンドな一台が欲しい。本機は、そんな強いニーズを持ったユーザーに的を絞り、その欲求を確実に満たす逸品といえるでしょう。

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